最終更新日:2026年9月3日
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まず結論
委託して作ってもらった成果物では、著作権と著作者人格権を分けて考えることが重要です。
FE試験では、次のように切り分けると迷いにくくなります。
複製・配布・提供・バックアップ
→ 著作権(財産権)を確認
名前をどう表示するか
公表するか
勝手に改変してよいか
→ 著作者人格権を確認
さらに、契約で「著作権を譲渡する」と書かれていても、著作者人格権まで同じように譲渡されたとは考えません。
著作権の譲渡と、著作者人格権の扱いは別に確認する。
直感的な説明
例えば、A社がB社へ業務フロー図の作成を委託したとします。
A社
↓ 委託
B社が業務フロー図を作成
↓ 納品
A社
ここで契約に、
著作権はA社へ譲渡する
と書かれていたとします。
この場合、A社は著作権者として、契約や著作権法の範囲で成果物を複製したり、第三者へ提供したり、バックアップしたりできます。
しかし、B社が著作者であり、著作者人格権について別の定めがない場合、
B社名を勝手にA社名へ変更する
といった行為は別の問題になります。
なぜなら、作者名を表示するか、どの名前で表示するかは、氏名表示権という著作者人格権の一つだからです。
つまり、
使う権利
と
作者としての人格的な権利
は別
と考えます。
定義・仕組み
著作権(財産権)
著作権は、著作物を利用することによる財産的な利益を守る権利です。
代表的には、次のような利用に関係します。
- 複製する
- 配布する
- Webなどで公衆へ送信する
- 翻訳・翻案する
- 他人へ利用を許諾する
著作権は契約によって譲渡することができます。
文化庁の「令和8年度著作権テキスト」でも、著作権(財産権)は契約によって譲り受けることができると説明されています。
また、著作権法第61条では、著作権を全部または一部譲渡できることが定められています。
著作者人格権
著作者人格権は、著作者の人格的な利益を守る権利です。
FE試験では、次の3つを押さえておくと判断しやすくなります。
| 権利 | 内容 |
|---|---|
| 公表権 | 未公表の著作物を公表するかどうかを決める |
| 氏名表示権 | 著作者名を表示するか、どの名前で表示するかを決める |
| 同一性保持権 | 著作物を意に反して勝手に改変されない |
文化庁も、氏名表示権について、著作者名を表示するか、実名や変名のどちらにするかなどを決める権利として説明しています。
著作者人格権は譲渡できない
ここが最重要ポイントです。
著作権法第59条では、著作者人格権は著作者だけに属し、譲渡できないと定められています。
そのため、
契約で著作権を譲渡した
↓
著作者人格権まで相手へ移った
とは考えません。
実務の契約では、成果物を修正したり氏名表示を変更したりする必要がある場合に、著作者人格権を行使しない旨を定めることがあります。
文化庁の著作権テキストでも、そのような契約例があることが説明されています。
科目Aでどう出る?
科目Aでは、委託成果物について、誰が何をできるかを問う形で出題されます。
まず、問題文から次の2点を探します。
1. 著作権は誰に帰属しているか
2. 著作者人格権について契約上の定めがあるか
そのうえで、選択肢の行為を分類します。
| 選択肢の行為 | 主に確認する権利 |
|---|---|
| 成果物をコピーする | 著作権 |
| 第三者へ提供する | 著作権・契約上の利用範囲 |
| バックアップを作る | 著作権 |
| 作者名を変更する | 氏名表示権 |
| 内容を勝手に改変する | 同一性保持権 |
| 未公表作品を公表する | 公表権 |
試験中は、次の一文を思い出します。
コピーや提供は著作権、名前・公表・改変は著作者人格権。
問題文に「著作権はすべて発注者へ譲渡」とある場合
この場合は、まず著作権に関する利用について発注者側ができる方向で考えます。
ただし、
著作権を全部譲渡
≠
著作者人格権も全部譲渡
です。
作者名の変更や、著作者の意に反する改変が出てきたら、著作者人格権を確認します。
どんな場面で使う?
外部へ資料や設計成果物を作成委託する
業務フロー図、マニュアル、イラスト、Webコンテンツなどを外部へ委託する場合、納品を受けただけでは、どの権利をどこまで利用できるかは決まりません。
契約で次の点を確認します。
- 著作権は誰に帰属するか
- 著作権を譲渡するか
- 第三者へ提供できるか
- 改変できるか
- 著作者名をどう表示するか
- 著作者人格権を行使しない旨の定めがあるか
社内で従業員が作成する場合との違い
外部委託と、会社の従業員が職務上作成する場合は別の考え方です。
従業員が職務上プログラムを作成した場合などは、職務著作が成立することがあります。
詳しくは、職務著作とは?従業員が作ったプログラムの著作権は誰のもの? で整理しています。
他人の著作物を利用する場合
著作権者から譲渡を受けていない場合や、単に他人の著作物を利用する場合は、原則として許諾の有無を確認します。
引用や私的使用などについては、著作権法で認められる利用とは?引用・私的使用・無断転載の違い で整理しています。
よくある誤解・混同
❌ 制作費を払ったので、著作権は自動的に発注者のものになる
支払いをしたことだけでは、著作権が自動的に発注者へ移るとは限りません。
外部委託では、契約上の権利帰属や譲渡条項を確認します。
❌ 著作権を全部譲渡したので、作者名も自由に変えられる
誤りです。
作者名の表示は著作者人格権の一つである氏名表示権に関係します。
著作権を譲渡しても、著作者人格権が同じように譲渡されるわけではありません。
❌ 著作権者なら著作物をどのように改変してもよい
著作者人格権の同一性保持権が関係する場合があります。
契約で著作者人格権の不行使について定めているかも確認します。
❌ バックアップは著作権と無関係
バックアップはデータを複製する行為なので、著作権と無関係とはいえません。
ただし、問題文で発注者へ著作権が譲渡されているなら、その事実を踏まえて判断します。
❌ 委託先が作ったものは職務著作になる
外部委託だから自動的に発注者の職務著作になるわけではありません。
職務著作は、法人の発意に基づき、その法人の業務に従事する人が職務上作成する場合などを扱う制度です。
社内の従業員が職務上作成
→ 職務著作を確認
外部の会社へ委託
→ 契約・著作権譲渡を確認
まとめ(試験直前用)
- 委託成果物では、著作権と著作者人格権を分けて考える
- 著作権は契約で譲渡できる
- 著作者人格権は著作者本人に専属し、譲渡できない
- 複製・配布・提供・バックアップは著作権を確認する
- 氏名表示は氏名表示権、公表は公表権、無断改変は同一性保持権を確認する
- 「著作権をすべて譲渡」だけで「作者名も自由に変更できる」とは判断しない
- 外部委託と職務著作を混同しない
著作権は譲渡できる。著作者人格権は作者に残る。行為ごとにどちらの権利かを切り分ける。