最終更新日:2026年8月3日
fe fe-strategy business-strategy inventory-management
まず結論
1回の発注量を増やすと、一般に次のような変化が起こります。
1回の発注量が増える
→ 発注回数が減る
→ 年間の発注費は減る
一方で、1回に多く仕入れるため、平均在庫量は増えます。
1回の発注量が増える
→ 平均在庫量が増える
→ 年間の保管費用は増える
基本情報技術者試験では、次の3種類の費用を分けて計算します。
年間総費用
= 年間仕入額
+ 年間発注費
+ 年間保管費用
数量割引がある場合は、単価だけで判断せず、3種類の費用を合計して比較することが重要です。
直感的な説明
文房具を1年間に400個使う会社を考えます。
1回に40個ずつ注文する場合、年間の発注回数は10回です。
400個 ÷ 40個 = 10回
1回に100個ずつ注文する場合、年間の発注回数は4回です。
400個 ÷ 100個 = 4回
100個ずつ注文した方が、注文の回数は少なくなります。
そのため、注文手続や配送などに掛かる発注費は減ります。
しかし、100個を一度に受け取ると、多くの商品を倉庫に置いておかなければなりません。
少量ずつ注文
→ 発注回数は多い
→ 在庫は少ない
大量に注文
→ 発注回数は少ない
→ 在庫は多い
つまり、発注量を決めるときは、発注費と保管費用のバランスを考えます。
定義・仕組み
年間の発注回数
年間発注量と1回の発注量が分かっている場合、発注回数は次の式で求めます。
年間発注回数
= 年間発注量 ÷ 1回の発注量
たとえば、年間に600個使用し、1回に50個発注する場合は次のようになります。
600個 ÷ 50個 = 12回
年間仕入額
年間仕入額は、1個当たりの仕入額と年間発注量を掛けて求めます。
年間仕入額
= 1個当たりの仕入額 × 年間発注量
数量割引がある場合は、割引後の仕入額を使います。
たとえば、1個5,000円の商品が10%引きになる場合、割引後の仕入額は次のとおりです。
5,000円 × 0.9 = 4,500円
年間発注費
1回の注文に掛かる発注費が分かっている場合は、年間発注回数を掛けます。
年間発注費
= 1回当たりの発注費 × 年間発注回数
1回の発注費が2,000円で、年間12回発注する場合は次のとおりです。
2,000円 × 12回 = 24,000円
平均在庫量
在庫が一定の割合で減少し、在庫がなくなった時点で次の商品が入荷するとします。
入荷直後の在庫量が100個で、そこから一定の割合で0個まで減る場合、平均在庫量は50個です。
平均在庫量
=(最大在庫量+最小在庫量)÷ 2
最小在庫量が0個で、最大在庫量が発注量と等しい場合は、次のように簡略化できます。
平均在庫量
= 1回の発注量 ÷ 2
| 1回の発注量 | 平均在庫量 |
|---|---|
| 40個 | 20個 |
| 100個 | 50個 |
| 200個 | 100個 |
年間保管費用
1個を1年間保管する費用が分かっている場合は、平均在庫量を掛けます。
年間保管費用
= 1個当たりの年間保管費用 × 平均在庫量
1個当たりの年間保管費用が1,000円で、平均在庫量が50個の場合は次のとおりです。
1,000円 × 50個 = 50,000円
年間総費用
最後に、仕入額、発注費、保管費用を合計します。
年間総費用
= 年間仕入額
+ 年間発注費
+ 年間保管費用
公式の出題範囲やシラバスは、IPA:基本情報技術者試験 から確認できます。
科目Aでどう出る?
科目Aでは、1回の発注量を変えた複数の方法について、年間総費用を比較する問題が考えられます。
解くときは、次の順番で計算します。
1. 年間の発注回数を求める
2. 数量割引の有無を確認する
3. 年間仕入額を求める
4. 年間発注費を求める
5. 平均在庫量を求める
6. 年間保管費用を求める
7. 年間総費用を比較する
計算例
年間に600個使用する商品について考えます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 年間発注量 | 600個 |
| 1個当たりの仕入額 | 5,000円 |
| 1回当たりの発注費 | 3,000円 |
| 1個当たりの年間保管費用 | 400円 |
| 数量割引 | 1回100個以上で仕入額を8%引き |
1回に50個発注する場合
年間の発注回数は次のとおりです。
600 ÷ 50 = 12回
数量割引の対象ではないため、年間仕入額は次のとおりです。
5,000円 × 600個
= 3,000,000円
年間発注費は次のとおりです。
3,000円 × 12回
= 36,000円
平均在庫量は25個です。
50個 ÷ 2 = 25個
年間保管費用は次のとおりです。
400円 × 25個
= 10,000円
年間総費用は次のとおりです。
3,000,000円
+ 36,000円
+ 10,000円
= 3,046,000円
1回に100個発注する場合
年間の発注回数は次のとおりです。
600 ÷ 100 = 6回
数量割引が適用されるため、1個当たりの仕入額は次のとおりです。
5,000円 × 0.92
= 4,600円
年間仕入額は次のとおりです。
4,600円 × 600個
= 2,760,000円
年間発注費は次のとおりです。
3,000円 × 6回
= 18,000円
平均在庫量は50個です。
100個 ÷ 2 = 50個
年間保管費用は次のとおりです。
400円 × 50個
= 20,000円
年間総費用は次のとおりです。
2,760,000円
+ 18,000円
+ 20,000円
= 2,798,000円
2つを比較します。
3,046,000円-2,798,000円
= 248,000円
この条件では、1回に100個発注する方が年間総費用は248,000円安くなります。
どんな場面で使う?
発注量と年間総費用の考え方は、在庫を持つ企業が、1回にいくつ注文するかを決める場面で使います。
たとえば、次のような場面です。
- 工場で使用する部品の発注
- 店舗で販売する商品の仕入れ
- 事務用品や消耗品の購入
- 倉庫に保管する材料の補充
- 数量割引を利用するかどうかの判断
発注量が少なすぎると、発注回数や発注費が増えます。
発注量が多すぎると、在庫量や保管費用が増えます。
発注量が少ない
→ 発注費が増えやすい
→ 保管費用は減りやすい
発注量が多い
→ 発注費が減りやすい
→ 保管費用は増えやすい
実務では、欠品のリスクや商品の劣化、倉庫の広さなども考慮します。
よくある誤解・混同
誤解1:年間発注量と1回の発注量を混同する
年間発注量は、1年間に必要な合計数量です。
1回の発注量は、1回の注文で仕入れる数量です。
年間発注量 ÷ 1回の発注量
= 年間発注回数
掛け算ではなく、割り算で求めます。
誤解2:平均在庫量を発注量と同じにする
入荷直後は発注量と同じ在庫がありますが、その後、在庫は減っていきます。
在庫が発注量から0まで一定の割合で減る場合、平均在庫量は発注量の半分です。
平均在庫量
= 発注量 ÷ 2
ただし、安全在庫がある場合や在庫の減り方が一定でない場合には、そのまま使えないことがあります。
試験では、問題文に示された条件を確認します。
誤解3:数量割引を発注費にも適用する
「仕入額の10%引き」と書かれている場合、割引するのは仕入額です。
仕入額 × 0.9
発注費や保管費用まで10%引きにしてはいけません。
誤解4:単価が安い方法をそのまま選ぶ
数量割引によって仕入単価が安くなっても、平均在庫量が増えれば保管費用は高くなります。
比較するのは単価ではなく、年間総費用です。
単価だけを比較する
→ 不十分
仕入額+発注費+保管費用を比較する
→ 正しい
誤解5:差額の向きを逆にする
「Aと比べてBはいくら高いか」を求める場合は、次の向きで引きます。
Bの費用-Aの費用
「高い」「安い」のどちらを聞かれているかを確認してから差を求めます。
まとめ(試験直前用)
- 年間発注回数は 年間発注量 ÷ 1回の発注量
- 平均在庫量は、在庫が発注量から0まで減るなら 発注量 ÷ 2
- 年間総費用は 仕入額+発注費+保管費用
- 数量割引は、指定された費用だけに適用する
- 単価ではなく、年間総費用を計算して比較する