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最終更新日:2026年10月4日

まず結論

中小受託取引適正化法は、委託取引を公正にし、中小受託事業者の利益を保護する法律です。 通称は取適法(とりてきほう)です。

旧下請法の改正により、2026年1月1日から名称や対象・規制内容が変わりました。このページは、施行後のルールを前提にしています。

科目Aでは、次の順で判断します。

対象となる委託取引か → 発注・支払の義務を守っているか → 発注側の都合を受注側に押し付けていないか。

契約書に同意を得たという理由だけで、法律に反する支払遅延や減額が認められるわけではありません。

直感的な説明

システム会社Aが、顧客向けソフトウェアの一部の開発を会社Bへ委託したとします。以下の例では、A・Bの規模と取引内容が取適法の適用条件を満たしているものとします。

Bが約束した仕様どおりに納品したのに、Aが「当社の予算が足りないので、代金を1割減らす」「顧客の入金が遅いので、支払も待ってほしい」と一方的に扱えば、Bは費用を回収できず困ります。

そこで、発注条件を明らかにし、支払期日を守り、受注側に責任のない不利益を押し付けないためのルールを設けています。

ソフトウェアが完成しているかという契約上の問題と、委託代金を適正に支払うかという問題を分けて考えます。

定義・仕組み

旧下請法との関係

正式な法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。「中小受託取引適正化法」は略称です。

旧制度の用語 現行制度の用語
下請代金支払遅延等防止法(下請法) 中小受託取引適正化法(取適法)
親事業者 委託事業者
下請事業者 中小受託事業者

名称の変更だけではありません。従業員数による適用基準や特定運送委託が追加され、協議に応じない一方的な代金決定、手形払いなどへの規制も加わっています。過去問に旧称が出てきても、現在のルールと区別します。

対象は「取引内容」と「事業者規模」で判断する

製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託など、法律で定める委託取引が対象です。プログラムの作成委託も、条件を満たせば情報成果物作成委託に該当します。

加えて、発注側と受注側の資本金の関係、または常時使用する従業員数の関係が、取引類型に応じた基準に該当するかを確認します。資本金基準と従業員基準の両方を満たす必要はありません。

例えば、法律上のプログラム作成委託に該当し、委託側の常時使用する従業員が400人、受託側が200人なら、300人を境とする従業員基準に該当します。ほかの取引類型には100人を境とするものもあります。

「小さい会社への外注だから必ず対象」「資本金基準に該当しないから必ず対象外」とは判断しません。 個々の基準は、公正取引委員会の概要と公式リーフレットで確認できます。

委託側に課される四つの義務

義務 科目Aで押さえる内容
発注内容等の明示 発注時に、給付内容、代金、支払期日などを、書面や電磁的方法で直ちに明示する
支払期日の設定 検査の有無を問わず、受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める
記録の作成・保存 取引内容の書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する
遅延利息の支払 支払が遅れた場合などに、法律に従って遅延利息を支払う

役務提供委託では、支払期日の起算点は役務の提供を受けた日です。ここではまず、物品や情報成果物の受領と、その後の検査完了を区別します。

現行制度では、発注内容を電子メールなどで明示することも可能です。「紙の発注書でなければ必ず違反」とは限りません。義務の詳細は、公正取引委員会:委託事業者の義務に整理されています。

代表的な禁止行為

禁止行為は11項目あります。次の表は、開発委託の場面で判断しやすい代表例です。

行為 問題となる例
受領拒否・返品 受注側に責任がないのに、発注側の計画変更で納品を拒んだり返したりする
支払遅延 定めた支払期日までに代金を支払わない
減額 受注側に責任がないのに、発注時に決めた代金を後から削る
買いたたき 通常の対価に比べて著しく低い代金を不当に定める
不当な給付内容の変更・やり直し 受注側に責任がない仕様変更や追加作業を、必要な費用を負担せずに行わせる
協議に応じない一方的な代金決定 受注側から価格協議を求められたのに、協議や必要な説明をせず一方的に決める

このほか、購入・利用強制、報復措置、不当な経済上の利益の提供要請なども禁止対象です。各行為の条件は、公正取引委員会:委託事業者の禁止行為で確認できます。

科目Aでどう出る?

「受領」と「検収」を区別する

納品物を受け取った後、契約内容に合っているかを確認する検査を、実務では検収と呼ぶことがあります。

取適法では、検査が終わってから60日以内と考えるのは誤りです。検査の有無にかかわらず、受領日から起算します。

例えば、受領から30日かけて検査し、その完了からさらに60日後に支払うという条件では、受領日から60日以内という枠を超えてしまいます。「社内の検収が長引いた」は、支払を自由に先延ばしできる理由にはなりません。

現行制度で注意する判断

選択肢の説明 判断
資本金基準に加え、従業員基準への該当も確認する 適切
受注側が承諾すれば、受領から90日後の支払でよい 不適切。合意だけで法定の枠を超えられない
支払期日までに手形を渡せばよい 不適切。現行制度では手形払いは禁止
値上げ要請には必ず要求額どおり応じなければならない 不適切。協議や説明を経ずに一方的に決めることの禁止とは異なる
委託側の予算不足を理由に、受注側に責任のない減額をする 不適切

手形以外の支払手段でも、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難なものは禁止されます。改正点は、公正取引委員会:取適法・振興法で確認できます。

どんな場面で使う?

顧客から受注したソフトウェア開発の一部を別会社へ委託し、仕様変更や納品、支払の条件を決める場面で使います。

追加機能が必要になった場合は、元の合意内容との差、追加費用、納期などを整理します。受注側の不具合修正と、発注側が後から望んだ機能追加を同じ扱いにしないことが大切です。

請負・準委任などの責任分担は、外部委託の契約形態の違いで扱います。取適法では、それとは別に、対象取引の発注・支払等が適正かを確認します。

よくある誤解・混同

下請法が廃止されたので、保護するルールもなくなった?

旧下請法が改正され、名称や規制が変わったものです。受託取引の公正化と受注側保護という目的は引き継がれています。

請負契約と書いてあれば、取適法は適用されない?

契約の名称だけで対象外にはなりません。取引内容と事業者規模の基準から判断します。逆に、外注というだけで一律に適用されるわけでもありません。

受注側に不具合があっても、やり直しは一切求められない?

禁止されるのは、不当な変更ややり直しです。合意した仕様に適合しないことと、発注側の都合による追加要求を区別します。契約内容への適合という論点は、契約不適合責任で確認できます。

60日以内なら、もともとの支払期日を過ぎてもよい?

60日は支払期日を設定する際の上限です。既に短い支払期日を定めていれば、その期日までに支払う必要があります。「60日までは自由に待たせられる」とは考えません。

確認問題(科目A・オリジナル)

A社がB社へプログラムの作成を委託した。この取引は取適法の適用対象であり、B社は合意した仕様に適合する成果物を納品した。A社の対応として、最も適切なものはどれか。

  • ア:検収が完了した日を起算点として、そこから60日以内の支払期日を設定する。
  • イ:顧客からの入金が遅れているため、定めた支払期日を過ぎても入金まで待たせる。
  • ウ:受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに支払う。
  • エ:A社の予算不足を理由に、B社に責任がなくても発注後に代金を減額する。

正解:ウ

  • ア:検査の完了日ではなく、受領日が基準です。
  • イ:A社側の入金事情だけで、B社への支払遅延が認められるわけではありません。
  • ウ:支払期日の設定と、その期日までの支払の両方を守っています。
  • エ:受注側に責任がないのに、発注側の都合で代金を削る減額に当たります。

公式情報・参考リンク

まとめ(試験直前用)

  • 取適法は、委託取引の公正化と中小受託事業者の利益保護を図る法律。
  • 取引内容と、資本金または従業員数の基準で対象を判断する。
  • 発注内容の明示、支払期日の設定、記録保存、遅延利息の四つの義務を押さえる。
  • 支払期日は受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間。検収完了日からではない。
  • 受注側に責任のない減額・不当なやり直しや、一方的な代金決定、手形払いに注意する。

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