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最終更新日:2026年7月9日

まず結論

本人拒否率(FRR)は、本人であるにもかかわらず認証に失敗する割合です。
他人受入率(FAR)は、他人であるにもかかわらず認証に成功してしまう割合です。

SG試験では、FRRは利便性、FARは安全性に関係する指標として切り分けます。

指標 意味 高いとどうなる? 主に関係する観点
本人拒否率(FRR) 本人なのに拒否される割合 本人が使いにくい 利便性
他人受入率(FAR) 他人なのに受け入れられる割合 なりすましが通りやすい 安全性

ポイントは、FRRとFARにはトレードオフがあることです。
判定を厳しくするとFARは下がりやすい一方で、FRRは上がりやすくなります。


直感的な説明

本人拒否率と他人受入率は、「厳しすぎるか、ゆるすぎるか」のバランスの話です。

厳しすぎる場合

  • 本人でも通れない
  • 本人が何度もやり直す必要がある
  • 問い合わせや再登録の手間が増える

この状態では、本人拒否率(FRR)が高いといえます。
安全寄りですが、利用者にとっては不便です。

ゆるすぎる場合

  • 他人でも通れる可能性がある
  • なりすましが成功しやすくなる
  • 不正利用や情報漏えいにつながるおそれがある

この状態では、他人受入率(FAR)が高いといえます。
使いやすいように見えても、安全性は下がります。

生体認証では、本人か他人かを完全に白黒で判定できるとは限りません。
指紋、顔、静脈、虹彩などの特徴を照合し、どの程度似ているかを見て判定します。

IPAのバイオメトリック照合製品に関する資料でも、登録済みの生体情報と照合時の特徴データの類似度をしきい値で判定し、誤拒否率(FRR)や誤受入率(FAR)が発生することが説明されています。詳しく確認したい場合は、IPAのバイオメトリック照合製品プロテクションプロファイルも参考になります。


定義・仕組み

本人拒否率(FRR:False Rejection Rate)

本人拒否率とは、本人であるにもかかわらず、誤って認証に失敗してしまう割合です。

たとえば、本人が100回認証を試みて、そのうち2回拒否された場合、本人拒否率は2%です。

  • 高い → 本人が通れず、利便性が悪い
  • 低い → 本人が通りやすく、利便性が高い

他人受入率(FAR:False Acceptance Rate)

他人受入率とは、本人ではない人が、誤って本人として認証に成功してしまう割合です。

たとえば、他人が1000回認証を試みて、そのうち1回通過してしまった場合、他人受入率は0.1%です。

  • 高い → なりすましが通りやすく、安全性が低い
  • 低い → なりすましが通りにくく、安全性が高い

しきい値とトレードオフ

生体認証では、登録済みの特徴と入力された特徴がどのくらい似ているかを見ます。
そして、「この程度以上似ていれば本人とみなす」という基準を決めます。

この基準がしきい値です。

しきい値の設定 起こりやすいこと FRR FAR
厳しくする 他人を通しにくいが、本人も拒否されやすい 上がる 下がる
緩くする 本人は通りやすいが、他人も通りやすい 下がる 上がる

つまり、本人拒否率を下げようとして判定を緩くすると、他人受入率が上がりやすくなります。
逆に、他人受入率を下げようとして判定を厳しくすると、本人拒否率が上がりやすくなります。

SG試験では、この関係を理解しているかがよく問われます。

EER(等価エラー率)

EER(Equal Error Rate:等価エラー率)は、FRRとFARが等しくなるときのエラー率です。

一般に、EERが低いほど、生体認証システムの精度が高いと考えられます。
ただし、実際の運用では、必ずEERの点に設定するとは限りません。

たとえば、高セキュリティな入退室管理では、利便性よりも安全性を優先してFARを低くします。
一方、日常的なスマートフォンのロック解除では、本人が何度も拒否されると使いにくいため、FRRも重視します。

関連用語:FTER

FTER(Fail To Enroll Rate)は、利用者の生体情報を登録できない割合です。
FRRやFARが「認証時の誤り」を見る指標であるのに対して、FTERは「登録時に失敗する割合」を見る指標です。

SG試験ではFRRとFARの切り分けが中心ですが、関連する指標として名前だけ見かけることがあります。


どんな場面で使う?

主な利用場面

  • 指紋認証
  • 顔認証
  • 静脈認証
  • 虹彩認証
  • 入退室管理システム
  • スマートフォンのロック解除
  • PCや業務システムへのログイン

安全性を優先する場面

金融システム、重要施設の入退室管理、管理者権限の認証などでは、他人が通過してしまうリスクを特に避ける必要があります。

この場合は、他人受入率(FAR)を低くすることが重視されます。

ただし、判定を厳しくすると本人拒否率(FRR)が上がり、本人でも入れない、業務が止まる、再認証が増えるといった問題が起こりやすくなります。

利便性を優先する場面

日常利用のスマートフォン、社内の一般的なログイン、利用頻度が高いシステムでは、本人が何度も拒否されると使いにくくなります。

この場合は、本人拒否率(FRR)を低くすることも重要です。

ただし、判定を緩くしすぎると他人受入率(FAR)が上がり、安全性が下がります。

運用での考え方

実務では、FRRとFARの数値だけでなく、次のような運用も合わせて考えます。

  • 失敗したときの再認証手段を用意する
  • パスワードやICカードなどと組み合わせる
  • 高リスク操作だけ追加認証を求める
  • 登録時の品質を確保する
  • 誤認証や拒否が多い場合に設定を見直す

SG試験では、「生体認証だから絶対安全」とは考えません。
認証方式ごとの特徴、しきい値、運用上の補完策まで含めて判断します。


よくある誤解・混同

誤解1:FRRとFARはどちらも低いほどよいので、同時に簡単に下げられる

理想としては、FRRもFARも低い方が望ましいです。

しかし、実際にはしきい値の調整によって、一方を下げるともう一方が上がりやすくなります。
そのため、用途に応じてバランスを取る必要があります。

誤解2:本人拒否率が低いほど安全である

これは誤りです。

本人拒否率が低いということは、本人が通りやすいという意味です。
しかし、判定を緩くして本人を通りやすくすると、他人も通りやすくなる可能性があります。

安全性を見るときは、主に他人受入率(FAR)を確認します。

誤解3:他人受入率が低いほど使いやすい

これも誤りです。

他人受入率を低くするには、判定を厳しくすることが多くなります。
すると、本人も拒否されやすくなり、本人拒否率(FRR)が上がる可能性があります。

使いやすさを見るときは、主に本人拒否率(FRR)を確認します。

誤解4:EERが低ければ、どの用途でも同じ設定でよい

EERは、生体認証システムの精度を比較する目安になります。

しかし、実際の運用では、用途によって重視するものが違います。
重要施設ではFARを低くする設定が望ましい一方、日常利用ではFRRが高すぎると使いにくくなります。

SG試験のひっかけパターン

  • 「FRRとFARを同時に必ず下げられる」→ 誤り
  • 「安全性は主にFARで判断する」→ 適切
  • 「利便性は主にFRRで判断する」→ 適切
  • 「判定を厳しくするとFARは下がりやすく、FRRは上がりやすい」→ 適切
  • 「判定を緩くするとFRRは下がりやすく、FARは上がりやすい」→ 適切
  • 「生体認証なら、なりすましや本人拒否は発生しない」→ 誤り

判断軸の再確認(確認問題の前に)

  • 本人が拒否される話かを見る:本人が困るならFRR。
  • 他人が通過する話かを見る:なりすましが通るならFAR。
  • 安全性か利便性かを見る:安全性はFAR、利便性はFRR。
  • しきい値の向きを見る:厳しくするとFARは下がりやすく、FRRは上がりやすい。

確認問題(SG試験対策)

生体認証システムで、なりすましを通しにくくするために判定を厳しくした。このとき起こりやすい変化として、最も適切なものはどれか。

  • ア. FARが上がり、FRRが下がる。
  • イ. FARが下がり、FRRが上がる。
  • ウ. FARとFRRが必ず同時に下がる。
  • エ. FRRだけが変化し、FARは変化しない。
▶ クリックして答えと解説を見る(ここを開く)

正解:イ

解説

  • ア:逆です。判定を厳しくすると、他人は通りにくくなるためFARは下がりやすく、本人も拒否されやすくなるためFRRは上がりやすくなります。
  • イ:適切です。安全性を高める方向の設定ですが、利便性は下がる可能性があります。
  • ウ:誤りです。FRRとFARにはトレードオフがあるため、しきい値調整だけで両方を必ず下げられるとは限りません。
  • エ:誤りです。しきい値を変えると、FRRとFARの両方に影響します。

判断ポイントは、「厳しくする=他人を通しにくいが、本人も弾きやすい」です。

まとめ(試験直前用)

  • 本人拒否率(FRR)=本人なのに拒否される割合
  • 他人受入率(FAR)=他人なのに受け入れられる割合
  • FRRは利便性、FARは安全性に関係する
  • 判定を厳しくすると、FARは下がりやすく、FRRは上がりやすい
  • 判定を緩くすると、FRRは下がりやすく、FARは上がりやすい
  • EERはFRRとFARが等しくなるときのエラー率
  • 高セキュリティ用途ではFAR、日常利用ではFRRも重視する
  • SG試験では「本人が困る話か、他人が通る話か」で選択肢を切る

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