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最終更新日:2026年10月4日

まず結論

ベイズの定理は、観測した結果を条件として、仮説や原因側の確率を求め直すための関係式です。 例えば、「不良品なら警報が出る確率」などから、「警報が出た製品が不良品である確率」を計算できます。

科目Aでは、次の違いに注意します。

不良品を検出する確率と、警報が出た製品が不良品である確率は、条件の向きが逆。

警報には良品への誤警報も含まれます。求めたい確率の分母は、警報が出た製品全体です。

直感的な説明

不良品を高い確率で見つける検査装置でも、「警報が出たら、ほぼ確実に不良品」とは限りません。

そもそも不良品が少なく、良品が非常に多い場合、良品の一部への誤警報が、不良品への警報より多くなることがあります。

そこで、次の二つを分けて数えます。

  • 不良品で、警報が出るもの
  • 良品なのに、警報が出るもの

両方を足して「警報が出る全体」を求め、その中の不良品の割合を計算します。

定義・仕組み

条件付き確率の向きを入れ替える公式

Hを「製品が不良品である」という仮説、Eを「警報が出た」という結果とします。P(H)は不良品である確率です。

P(E|H)は「Hという条件でEが起こる確率」を表します。縦線の右側が条件です。基本的な記号の読み方は、条件付き確率とは?で確認できます。

P(H|E) = P(E|H) × P(H) ÷ P(E) ただし、P(E) > 0

記号 この例での意味 呼び方・役割
P(H) 検査結果を見る前に、不良品である確率 事前確率
P(E|H) 不良品という仮説の下で、警報が出る確率 観測した結果について、仮説のもっともらしさを比較するときの尤度(ゆうど)
P(E) 不良品か良品かを問わず、警報が出る確率 結果全体の確率。分母に使う
P(H|E) 警報が出たと分かった後で、不良品である確率 事後確率

分子のP(E|H) × P(H)は、「不良品かつ警報が出る」確率です。 それを、警報が出る確率全体で割ります。

10,000個に換算して考える例

ある工程の製品を検査するとします。製品は不良品か良品のいずれかで、確率は次のとおりです。

  • 不良品である確率:1%
  • 不良品に警報が出る確率:90%
  • 良品に誤って警報が出る確率:5%

割合を理解しやすくするため、10,000個に換算して表を作ります。表の件数は確率から求めた説明用の値であり、実際に10,000個を調べたとき必ずこの件数になるという意味ではありません。

製品の状態 換算した総数 警報が出る 警報が出ない
不良品 100個 90個 10個
良品 9,900個 495個 9,405個
合計 10,000個 585個 9,415個

不良品100個の90%が90個、良品9,900個の5%が495個です。

警報が出る585個のうち、不良品は90個なので、求める確率は次のとおりです。

90 ÷ (90 + 495) = 90 ÷ 585 ≒ 15.4%

表の読み方:「警報が出た」という条件なので、警報が出る列の585個を分母にします。 不良品全体の100個や、製品全体の10,000個ではありません。

検査結果を見る前の不良品の確率は1%でした。警報を知った後は約15.4%に上がりますが、不良品を検出する確率90%と同じにはなりません。

確率のまま計算する

警報が出る経路は、「不良品に警報」と「良品に誤警報」の二つです。不良品と良品は同時には成り立たず、全体を尽くしているので、この二つの確率を足します。

P(E) = 0.01 × 0.90 + 0.99 × 0.05 = 0.0585

したがって、ベイズの定理から次が求まります。

P(H|E) = (0.90 × 0.01) ÷ 0.0585 ≒ 0.154

件数表でも確率の式でも、分母に同じ結果へ至るすべての経路を含める点は共通です。

科目Aでどう出る?

計算を三つに分ける

  1. 求める確率を言葉で書く。「警報が出た製品のうち、不良品である確率」など、条件を確定する。
  2. 条件に当てはまる結果全体を求める。不良品への警報と、良品への誤警報を足す。
  3. 求めたい側の件数・確率を、結果全体で割る。

割合が複数出てきて混乱するときは、100個、1,000個、10,000個など、計算しやすい全体数に換算します。全体数を何倍にしても、分子と分母が同じ倍率で増えるので、求める割合は変わりません。

誤答は「どの分母を使ったか」で見分ける

計算 求めているもの
90 ÷ 100 = 90% 不良品という条件で警報が出る確率。条件が逆
90 ÷ 10,000 = 0.9% 全体で、不良品かつ警報が出る確率
585 ÷ 10,000 = 5.85% 全体で警報が出る確率
90 ÷ 585 ≒ 15.4% 警報が出たという条件で不良品である確率

どんな場面で使う?

製品の検査結果から不良品の可能性を見積もる場合や、障害の通知から故障箇所の可能性を調べる場合などに使います。

特定の故障で通知が出やすいとしても、ほかの原因でも同じ通知が出るなら、その可能性を含めて考えます。結果が一つ観測されたことと、原因が一つに確定したことを区別します。

よくある誤解・混同

不良品を90%検出できるなら、警報後の不良率も90%?

条件の向きが異なるため、同じとは限りません。元の不良率と、良品に警報が出る確率も必要です。

不良品の検出率だけで計算できる?

通常はできません。結果全体の確率を求めるために、各状態の割合や、その状態で結果が出る確率などの情報が必要です。

ベイズの定理では二つの事象を独立と仮定する?

独立は必須条件ではありません。この例では、不良品か良品かによって警報の確率が異なります。条件付き確率を使って計算するので、勝手に独立とみなしてはいけません。

事後確率を求めれば、原因や因果関係が確定する?

得られるのは、与えられた確率や仮定の下での条件付き確率です。原因を断定するものではなく、ベイズの定理そのものが因果関係を証明するわけでもありません。

なお、仮説検定で使うp値は、仮説の事後確率とは異なります。p値を「仮説が正しい確率」と読み替えないように注意します。

確認問題(科目A・オリジナル)

ある工程では、製品が不良品である確率は10%である。検査装置は、不良品の80%に警報を出し、良品の10%にも誤って警報を出す。警報が出た製品が不良品である確率に最も近いものはどれか。

  • ア:8%
  • イ:17%
  • ウ:47%
  • エ:80%

正解:ウ

1,000個に換算すると、不良品100個のうち80個、良品900個のうち90個に警報が出ます。警報が出る全体は170個なので、80 ÷ 170 ≒ 47.1%です。

  • ア:0.10 × 0.80 = 8%は、不良品かつ警報が出る確率です。
  • イ:8% + 9% = 17%は、警報が出る確率全体です。
  • ウ:警報が出る全体に占める不良品の割合を求めているため適切です。
  • エ:80%は、不良品という条件で警報が出る確率です。条件が逆です。

公式情報・参考リンク

まとめ(試験直前用)

  • ベイズの定理は、観測した結果を条件に、仮説側の確率を求め直す関係式。
  • 事後確率 = 尤度 × 事前確率 ÷ 結果全体の確率。
  • 「不良品なら警報」と「警報が出たら不良品」は条件が逆。
  • 分母には、不良品への警報だけでなく、良品への誤警報も含める。
  • 迷ったら全体を件数に換算し、結果に当てはまる列に絞って割合を求める。

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