最終更新日:2026年7月14日
sg sg-security-measures unauthorized_access network access_control
まず結論
ステートフルインスペクションとは、ファイアウォールが通信セッションの状態を記録し、その状態に合うパケットだけを通過させる方式です。
SG試験では、パケット単体を見るパケットフィルタリング方式と、通信の流れを見るステートフルインスペクション方式を切り分けます。
| 方式 | 見るもの | 判断のポイント |
|---|---|---|
| パケットフィルタリング方式 | IPアドレス、ポート番号、プロトコル | パケット単体を見る |
| ステートフルインスペクション方式 | 通信セッションの状態 | 通信の流れ・戻り通信を見る |
| WAF | HTTPリクエストなどの内容 | Webアプリへの攻撃を見る |
迷ったら、「パケット単体を見る話か、通信の流れを見る話か」を確認します。
直感的な説明
ステートフルインスペクションは、入退場の流れを覚えている受付のようなものです。
たとえば、社内PCから外部のWebサイトへアクセスしたとします。
- 社内PCからWebサーバへ通信を開始する
- ファイアウォールが「この通信は社内PCから始まった」と記録する
- Webサーバから返答が戻ってくる
- 記録と合っていれば、正しい戻り通信として通す
外部から内部へ向かうパケットでも、社内PCが始めた通信への返事であれば、通信の流れとして自然です。
単純なパケットフィルタリング方式は、パケットごとにIPアドレスやポート番号などの条件を見ます。
一方、ステートフルインスペクション方式は、パケット単体ではなく、通信のつながりも見ます。
定義・仕組み
ステートフルインスペクション方式は、ファイアウォールが通信の状態を管理する方式です。
ファイアウォールは、通信ごとの情報をステートテーブル(状態テーブル)に一時的に記録します。
| 記録する情報 | 内容 |
|---|---|
| 送信元IPアドレス | 通信を始めた端末 |
| 宛先IPアドレス | 通信先のサーバ |
| 送信元ポート番号 | 送信側のポート番号 |
| 宛先ポート番号 | サービスのポート番号 |
| プロトコル | TCP、UDPなど |
| 通信の向き | 内部から外部、外部から内部など |
| セッション状態 | 通信開始中、確立済みなど |
戻ってきたパケットがこの記録と合っていれば、ファイアウォールは「正しい通信の続き」と判断して通します。
つまり、1個のパケットだけではなく、前後の流れを踏まえて通過可否を判断する仕組みです。
参考として、NISTのファイアウォールに関する文書でも、パケットフィルタリング、ステートフルインスペクション、アプリケーションプロキシゲートウェイなどの技術が整理されています。
NIST SP 800-41 Rev.1 Guidelines on Firewalls and Firewall Policy
ファイアウォール方式の切り分け
| 方式 | 見ているもの | 試験での判断基準 |
|---|---|---|
| パケットフィルタリング方式 | IPアドレス、ポート番号、プロトコル | パケット単体の条件で判断する |
| ステートフルインスペクション方式 | 通信セッションの状態 | 通信の流れ・状態を見る |
| アプリケーションゲートウェイ方式 | アプリケーションプロトコルの内容 | プロキシとして中継し、内容を検査する |
| サーキットレベルゲートウェイ方式 | コネクションの確立 | 接続の成立を見て制御する |
| WAF | Webアプリケーションへの通信内容 | Webアプリへの攻撃を防ぐ |
| 次世代ファイアウォール(NGFW) | アプリケーション、利用者、脅威情報など | 従来型FWより細かく制御する |
| UTM | 複数のセキュリティ機能 | FW、ウイルス対策、IPSなどをまとめる |
選択肢では、何を見て判断しているかに注目します。
どんな場面で使う?
ステートフルインスペクション方式は、社内ネットワークとインターネットの境界などで使われます。
内部から開始した通信の戻りを許可する
社内PCから外部Webサイトへアクセスした場合、その返事は外部から内部へ戻ってきます。
ステートテーブルに記録があれば、正しい戻り通信として許可できます。
外部から突然始まる通信を遮断する
外部から社内PCへ突然パケットが届いても、対応する通信記録がなければ、正しい通信の続きではないと判断しやすくなります。
戻り通信用のルールを管理しやすくする
パケットフィルタリング方式だけで戻り通信を管理すると、許可ルールが複雑になりやすくなります。
ステートフルインスペクション方式では、通信状態に合う戻り通信だけを通しやすいため、必要以上に広い範囲を開けずに済みます。
ただし、万能ではありません。
SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングのように、HTTP通信の中身を詳しく見る必要がある攻撃には、WAFなど別の対策が必要です。
よくある誤解・混同
誤解1:パケットフィルタリング方式と同じである
どちらもパケットを通すか止めるか判断しますが、見る範囲が違います。
| 比較項目 | パケットフィルタリング | ステートフルインスペクション |
|---|---|---|
| 見る情報 | ヘッダー情報中心 | ヘッダー情報+通信状態 |
| 判断方法 | ルールに一致するか | 通信の流れとして自然か |
| 戻り通信 | 個別ルールが必要になりやすい | 状態テーブルから判断しやすい |
| キーワード | IPアドレス、ポート番号 | セッション、状態、戻り通信 |
誤解2:通信内容の本文まで詳しく検査する
ステートフルインスペクションは、通信状態を見ますが、HTTPリクエストの本文などを深く解析する仕組みではありません。
- Webアプリへの不正な入力を検査する → WAF
- アプリケーションごとにプロキシを用意する → アプリケーションゲートウェイ方式
- 通信状態を見る → ステートフルインスペクション方式
誤解3:通信を暗号化する仕組みである
ステートフルインスペクションの役割は、通信の通過可否を判断することです。
通信を暗号化する代表例は、TLSやVPNです。
誤解4:不正な通信を必ず防げる
通信の流れが正しく見える攻撃や、許可された通信の中に含まれる不正な内容までは、十分に検出できないことがあります。
必要に応じて、IDS、IPS、WAF、ログ監視などと組み合わせます。
SG試験での判断軸
- パケット単体を見る → パケットフィルタリング方式
- 通信の状態・流れを見る → ステートフルインスペクション方式
- アプリケーションごとのプロキシ → アプリケーションゲートウェイ方式
- コネクションの確立を見る → サーキットレベルゲートウェイ方式
- Webアプリへの攻撃を見る → WAF
確認問題(SG試験対策)
ステートフルインスペクション方式の説明として、最も適切なものはどれか。
- ア. IPアドレスやポート番号だけを見て、パケット単体で通過可否を判断する。
- イ. 通信セッションの状態を記録し、その状態に合う戻り通信などを許可する。
- ウ. HTTPリクエストのパラメータを詳しく検査し、SQLインジェクションを防ぐ。
- エ. 利用者の認証情報を一元管理し、シングルサインオンを実現する。
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正解:イ
- ア:パケットフィルタリング方式の説明です。
- イ:適切です。通信セッションの状態を記録し、その状態に合うパケットを通します。
- ウ:WAFの説明に近いです。
- エ:認証基盤やシングルサインオンの説明です。
判断ポイントは、「通信セッションの状態」「戻り通信」です。
まとめ(試験直前用)
- ステートフルインスペクションは、通信セッションの状態を管理するファイアウォール方式
- パケット単体ではなく、通信の流れや戻り通信を見る
- パケットフィルタリングは、IPアドレスやポート番号などの条件を中心に見る
- HTTPリクエストの中身を詳しく見るのはWAF
- 通信を暗号化する仕組みではない
- SG試験では、「状態を管理する」「セッションを追跡する」「戻り通信を許可する」で判断する