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最終更新日:2026年10月4日

まず結論

人間中心設計(HCD:Human-Centred Design)は、利用者・目的・利用環境を理解し、利用者の要求に照らして設計と評価を繰り返す設計の考え方です。 使いやすく、利用者に役立つシステムやサービスを目指します。

科目Aでは、次の組合せが判断の手掛かりです。

利用状況を理解する → 利用者の要求を明確にする → 解決策を作る → 評価し、必要な活動に戻る。

人間中心設計では、開発者の経験だけで「使いやすいはず」と決めず、利用者の参加や利用者視点の評価を設計に反映します。

直感的な説明

図書館の蔵書予約システムを作るとします。

開発者は「予約ボタンを大きくすれば使いやすい」と考えました。しかし、初めて使う人の操作を観察すると、ボタンを押した後に予約が成立したか分からず、同じ操作を繰り返していました。

この場合、ボタンの大きさだけでは問題を解決できません。「予約の受付結果と受取場所を、その場で確認できる」という要求を明確にし、確認画面を試作して、利用者が理解できるかを確かめます。

見た目の好みを聞くだけでなく、利用者が目的を達成する過程を調べ、設計を確かめ直すのが人間中心設計の考え方です。

定義・仕組み

計画を立て、四つの活動を反復する

人間中心設計では、最初に利用者の参加方法、調査や評価の時期、担当者などを計画します。その上で、次の四つの活動を必要に応じて繰り返します。

活動 確認・実施すること 図書館システムでの例
利用状況の理解と明示 誰が、何のために、どのような環境で使うかを把握する 初めて使う利用者が、スマートフォンで本を予約する場面を観察する
利用者要求の明確化 利用者が達成すべきことや、使いやすさの条件を整理する 予約の受付結果と受取場所を、問い合わせずに確認できることを要求にする
解決策の作成 要求を満たす仕組みや画面を設計・試作する 予約内容、受付結果、受取場所を示す確認画面を作る
要求に対する評価 作った解決策が要求を満たすかを確かめる 利用者に予約操作を行ってもらい、受付結果と受取場所を理解できるかを見る

表の読み方:調査で見つけた困り事を要求にし、その要求を満たす設計かどうかを評価します。 活動名の順番だけでなく、何を根拠に次へ進むかを押さえます。

評価結果に応じて戻る

評価で問題が見つかったら、画面だけを直すとは限りません。

評価で分かったこと 見直す活動の例
受付結果の表示が小さく、見落とされる 解決策の作成に戻り、表示を修正する
利用者は受取場所だけでなく受取期限も知る必要がある 利用者要求を見直す
本人だけでなく家族が代理で予約する使い方が多い 利用状況の理解に戻り、対象者や使い方を調べる

つまり、四つの活動は、一度だけ順番に通過する工程ではありません。新しく分かった事実に応じて、必要な活動へ戻ります。

利用者を継続的に関与させる

利用者への聞き取り、実際の操作の観察、試作品を使った評価などを、開発の適切な段階で行います。完成後のアンケート一回だけに限定しません。

評価する試作品をプロトタイプといいます。紙に描いた画面や、画面遷移だけを試せる簡単な試作品でも、文言や操作の分かりやすさを確かめられます。確認したい内容に合う試作品を用意します。

また、開発者だけでなく、設計、業務、運用、利用者調査など、異なる専門知識を持つ人が協力することも大切です。

科目Aでどう出る?

正しい説明を選ぶ判断軸

選択肢の説明 判断
利用者、作業、利用環境を理解して設計する 人間中心設計の考え方に合う
利用者視点の評価結果を設計の改善に反映する 人間中心設計の考え方に合う
評価で要求の不足が分かれば、要求の整理に戻る 反復的な進め方として適切
開発者が使いやすいと感じれば、利用者による確認は不要である 開発者と利用者の違いを考慮していない
利用者の評価は完成後に一度だけ行う 途中で試し、改善する機会を失う
最初に決めた利用者要求は、調査結果にかかわらず変更しない 新たな発見を反映する考え方と合わない

「利用者の要望」と「利用者要求」を区別する

利用者が「通知をもっと増やしてほしい」と発言したとしても、通知を増やすこと自体が目的とは限りません。背景に「予約が成立したか分からない」という困り事がある可能性があります。

そこで、発言や行動から達成したいことを調べ、要求を明確にします。その要求に対し、完了画面、通知、予約履歴などの解決策を検討します。

利用者の意見を重視することと、発言された案をすべてそのまま実装することは異なります。 実現可能性、費用、安全性なども考慮し、要求に合う解決策を選びます。

どんな場面で使う?

初めての人も利用する申請サイト、現場の作業者が使う業務端末、利用者の年齢や経験が幅広い予約サービスなどで役立ちます。

例えば、事務所の大きな画面では操作できても、移動中のスマートフォンでは文字が読みにくい場合があります。人間中心設計では、利用者の属性だけでなく、端末や周囲の環境、作業の流れも含めて確認します。

色の識別、読み上げ、入力機器などの違いによる障壁と改善策は、アクセシビリティとは?で確認できます。

操作する接点と利用体験の違いは、UIとUXの違いで整理しています。UI・UXは設計で考慮する対象、人間中心設計は利用者を理解しながら設計を進める考え方としてつなげると理解しやすくなります。

よくある誤解・混同

人間中心設計は画面を美しくすること?

画面の外観だけではありません。利用者が何をしたいのか、どの環境で使うのかを調べ、必要な情報や作業の流れまで検討します。

利用者に設計をすべて任せること?

利用者は調査や評価に関わりますが、解決策を設計する責任まで利用者だけに任せるわけではありません。設計する側が、利用者の状況と要求を踏まえて案を作り、評価します。

プロトタイプを一度作れば、人間中心設計になる?

試作品は手段です。利用状況や要求と結び付けて評価し、その結果を改善に反映する必要があります。

人間中心設計は特定の開発手法と同じ?

人間中心設計は、特定の開発工程にだけ使うものではありません。段階的に開発する場合でも、短い周期で開発する場合でも、利用者の理解、要求、設計、評価を組み込めます。

確認問題(科目A・オリジナル)

ある図書館が、蔵書予約システムの確認画面を試作した。初めて使う利用者に操作してもらったところ、予約の受付結果は理解できたが、受取期限が分からないという問題が見つかった。人間中心設計に基づく対応として、最も適切なものはどれか。

  • ア:当初の要求に受取期限の表示はなかったため、評価結果は採用しない。
  • イ:開発者は受取期限を知っているため、利用者への案内は不要とする。
  • ウ:利用者に画面設計をすべて任せ、開発側では評価しない。
  • エ:受取期限を知る必要性を確認して要求を見直し、改善した試作品を再評価する。

正解:エ

  • ア:評価によって要求の不足が分かることがあります。当初の要求を固定して新たな発見を無視するのは不適切です。
  • イ:開発者と初めて使う利用者では知識が異なります。利用者の状況に基づいて判断します。
  • ウ:利用者の参加は大切ですが、設計と評価を利用者任せにすることではありません。
  • エ:評価で見つけた問題を要求と設計に反映し、改善を確かめる反復になっているため適切です。

公式情報・参考リンク

まとめ(試験直前用)

  • 人間中心設計は、利用者と利用状況を理解し、設計と評価を反復する考え方。
  • 活動は、利用状況の理解、利用者要求の明確化、解決策の作成、要求に対する評価。
  • 評価結果に応じて、設計だけでなく要求や利用状況の把握にも戻る。
  • 利用者を継続的に関与させ、完成後の一度きりの評価にしない。
  • 利用者の要望をすべて採用するのではなく、背景にある目的や困り事を捉える。

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